社員から「会社を辞めたい」と打ち明けられたとき、
管理職として、どう受け止め、どう向き合えばいいのか
戸惑いや不安を感じる方は多いのではないでしょうか。
無理に引き止めれば関係が悪くなりそうで怖い。
一方で、何もせず送り出してしまっていいのかも分からない。
その判断に、正解が見えなくなる瞬間です。
退職の引き止めに大切なのは、
「引き止めること」そのものではなく、
相手の気持ちを尊重しながら、適切な判断をすることです。
本記事では、社員から「辞めたい」と言われたときに
管理職がまず考えるべき判断基準をはじめ、
退職を考えている社員の前兆サイン、
信頼関係を損なわない正しい引き止め方、
そして絶対に避けたいNG対応まで、分かりやすく解説します。
目の前の社員と誠実に向き合うためのヒントとして、
少しでもお役に立てれば幸いです。
まず判断すべき:引き止めるべきか、送り出すべきか

社員から「辞めたい」と言われると、
「何とか引き止めなければ」と思ってしまう方も多いかもしれません。
ですが、退職の相談を受けたときに本当に大切なのは、
引き止めるかどうかをすぐに決めることではありません。
その社員にとって、今どんな状況なのか。
会社として、どこまで応えられるのか。
この2つを冷静に見つめることが、後悔しない判断につながります。
無理に引き止めることが、必ずしも本人や組織のためになるとは限りません。
まずは「引き止めたほうがよいケース」と
「送り出したほうがよいケース」を整理して考えてみましょう。
引き止めたほうがよい社員の特徴
社員の退職理由によっては、引き止めが前向きな結果につながることもあります。
たとえば、次のような場合は、
少し立ち止まって話し合う価値があるケースです。
- 業務量や働き方など、環境を調整すれば改善できそうな不満がある
- 上司や同僚との関係に悩んでいるが、解決の余地がある
- 一時的な疲れやストレスが重なり、気持ちが弱っている
- 仕事そのものにはやりがいを感じている様子がある
このようなケースでは、
話を丁寧に聞き、環境や役割を見直すことで、
「もう少しここで頑張ってみよう」と思える可能性があります。
大切なのは、「辞めたい」という言葉の奥にある本当の気持ちを
急がずに理解しようとする姿勢です。
無理に引き止めないほうがよい社員の特徴
一方で、どれだけ配慮しても、
引き止めることが本人のためにならない場合もあります。
- 会社の方向性や価値観と、本人の考えが大きくずれている
- すでに次のキャリアについて明確な目標を持っている
- 長期間悩み続けた末に、強い覚悟を持って決断している
- 過去に改善を試みたが、期待できないと感じている
このような場合、無理に引き止めようとすると、
かえって信頼関係を損ねてしまうことがあります。
管理職としてつらい判断ではありますが、
相手の人生や選択を尊重することも、誠実な関わり方の一つです。
「引き止めない」という判断も、
決して冷たい対応ではないことを覚えておきましょう。
この章で伝えたいこと
- すぐに答えを出さなくていい
- 引き止め=正解ではない
- 判断すること自体が、管理職の大切な役割
会社を辞めたいと言われたとき管理職が最初にやるべき対応

社員から「辞めたい」と言われた瞬間、
頭が真っ白になったり、どう返せばいいか分からなくなったりするのは、
決して珍しいことではありません。
大切なのは、その場で完璧な答えを出そうとしないことです。
最初の対応次第で、その後の話し合いの雰囲気や
信頼関係が大きく変わっていきます。
ここでは、管理職が最初に意識しておきたい対応のポイントを整理します。
まずは話を遮らず、最後まで聞く
退職の相談を受けたとき、つい理由を深掘りしたり、
自分の考えを伝えたくなってしまうことがあります。
ですが最初の段階では、
相手の話を途中で遮らず、最後まで聞くことが何より大切です。
- 反論やアドバイスは急がない
- 「そう感じていたんですね」と受け止める
- 正解・不正解を判断しない
「話を聞いてもらえた」と感じてもらえるだけで、
相手の気持ちは少し落ち着き、
本音を話しやすくなることがあります。
その場で結論を出そうとしない
引き止めるべきかどうかを、
その場ですぐに決める必要はありません。
むしろ、即答しないほうが良いケースも多くあります。
- 「少し考える時間をもらってもいいかな」
- 「改めて、もう一度ゆっくり話す時間をつくろう」
こうした言葉を添えることで、
相手にも「真剣に考えてくれている」という安心感が伝わります。
軽々しく約束をしたり、
勢いで引き止めたりしないことが、
後悔しない判断につながります。
感情ではなく、状況を整理する意識を持つ
驚きや焦り、不安など、感情が大きく動く場面ですが、
ここでは一度落ち着いて、状況を整理する視点を持ちましょう。
- 何が一番つらいと感じているのか
- いつ頃から悩み始めていたのか
- 仕事・人間関係・働き方のどこに原因がありそうか
「なぜ辞めたいのか」を詰めるのではなく、
「何に困っているのか」を一緒に整理する。
その姿勢が、対話を前向きなものにします。
周囲に配慮し、話しやすい環境を整える
退職の話は、とてもデリケートな内容です。
周囲に聞かれない場所や、落ち着いて話せる時間を確保しましょう。
- 会議室や個室を使う
- 業務の合間ではなく、時間を取る
- 忙しさを理由に後回しにしない
「きちんと向き合ってくれている」という姿勢そのものが、
信頼関係を保つ大切な要素になります。
この章のポイント
- すぐに答えを出さなくていい
- まずは受け止め、聞くことを優先する
- 感情よりも対話を大切にする
退職を考えている社員に現れる前兆サイン

社員の退職は、ある日突然決まるように見えても、
多くの場合、その前に小さなサインが現れています。
ただし、忙しい業務の中で
すべてに気づくことは簡単ではありません。
気づけなかったからといって、
管理職として失格というわけではないので安心してください。
ここでは、比較的よく見られる前兆サインを紹介します。
モチベーションや仕事への向き合い方の変化
- 以前よりも仕事への意欲が感じられない
- 成果や評価に関心を示さなくなる
- ミスが増えたり、集中力が続かなくなる
こうした変化は、必ずしも「辞めたい」気持ちだけが原因とは限りません。
ただ、以前との違いが続いている場合は、
一度声をかけてみるきっかけになります。
行動や勤務態度の変化
- 遅刻や欠勤、有給休暇の取得が増える
- 残業を避けるようになる、早く帰るようになる
- 身だしなみや表情に変化が見られる
働き方の変化には、
体調面や家庭の事情が影響していることもあります。
決めつけず、
「最近どう?」とさりげなく聞くことが大切です。
コミュニケーションの変化
- 雑談や相談が減る
- 会議や打ち合わせで発言しなくなる
- 必要最低限の会話しかしなくなる
人との関わりを避けるようになるのは、
心に余裕がなくなっているサインの一つです。
無理に踏み込まず、
話しやすい雰囲気をつくることを意識しましょう。
社外の活動に意識が向き始める
- 資格取得や勉強を始める
- 副業や社外コミュニティへの参加が増える
- 将来やキャリアの話題が増える
これらは前向きな行動でもありますが、
同時に「今の環境から一歩外に出たい」
という気持ちの表れであることもあります。
この章で伝えたいこと
- 前兆は「小さな違和感」として現れる
- 早めに気づければ、対話のきっかけになる
- 気づけなかったとしても、自分を責めすぎない
なぜ社員は「辞めたい」と思うのか(引き止めが難しい理由)

「きちんと話を聞いたつもりなのに、引き止められなかった」
そんな経験がある管理職の方もいるかもしれません。
ですが、社員が退職を考える背景には、
管理職一人の力ではどうにもならない事情があることも多く、
引き止めが難しいのは決して珍しいことではありません。
ここでは、よく見られる理由を整理していきます。
覚悟を持って決断している
社員が「辞めたい」と口にするまでには、
長い時間をかけて悩み、考えてきたケースがほとんどです。
軽い気持ちで出てきた言葉ではなく、
すでに心の中で覚悟を決めている場合も少なくありません。
この段階まで気持ちが固まっていると、
短い話し合いや条件提示だけで
考えを変えてもらうのは簡単ではありません。
引き止めが難しいのは、
それだけ真剣に考えて出した結論だから、ということもあります。
会社の価値観やキャリアの方向性が合わなくなっている
仕事を続ける中で、
会社の方針や価値観と、
自分の考え方が少しずつズレていくことがあります。
また、
「この先どんな成長ができるのか」
「自分の目指すキャリアにつながるのか」
といった不安が積み重なることもあります。
このようなズレは、
努力や気合で埋められるものではありません。
本人の人生や将来を考えたとき、
残る理由が見つからなくなってしまうと、
引き止めは難しくなります。
ライフステージの変化による影響
結婚、出産、介護、家庭環境の変化など、
人生の節目によって、
働き方の優先順位が変わることがあります。
今まで当たり前だった働き方が
続けられなくなることもあり、
それは本人の努力不足ではありません。
会社として柔軟に対応できない場合、
退職という選択をせざるを得ないこともあります。
これ以上改善されないと感じている
退職を考える社員の中には、
「もう何を言っても変わらない」
「期待するだけ疲れてしまった」
と感じている人もいます。
過去に相談や提案をした経験があり、
それが十分に改善されなかった場合、
会社への期待を手放してしまうことがあります。
この状態になると、
引き止めの言葉が届きにくくなるのも無理はありません。
この章で伝えたいこと
- 引き止めが難しいのには、きちんと理由がある
- 管理職の努力だけで変えられないケースもある
- うまくいかなかったとしても、自分を責めすぎない
【実務で使える】正しい引き止め方7選

社員が「辞めたい」と言ったときに大切なのは、
無理に引き止めるのではなく、
相手の気持ちに寄り添いながら一緒に解決策を考えることです。
ここでは、管理職が実務で使いやすい
7つのポイントをやさしくまとめました。
1. まずは相手の気持ちに寄り添う
退職の相談を受けたときは、
まず「あなたの気持ちをちゃんと聞きたい」という姿勢を示しましょう。
議論や反論はせず、相手の話を最後まで聞くことが大切です。
- うなずきや相槌で安心感を与える
- 表情や言葉で「受け止めている」と伝える
- 周囲の目が気にならない場所で話す
「話を聞いてもらえた」と感じるだけで、
社員は安心し、本音を話しやすくなります。
2. 本音を引き出す質問をする
建前や一般論で話す人も多いため、
そのまま聞いただけでは本当の理由が分からないことがあります。
「どうしてそう思ったのか」「何に困っているのか」と、
優しく具体的に質問してみましょう。
- 「どんな点で働きづらさを感じていますか?」
- 「今の仕事で一番悩んでいることは何ですか?」
本人が気持ちを整理しながら話せるよう、
急かさず、じっくり耳を傾けることがポイントです。
3. 一緒に解決策を考える
不満や不安が分かったら、
「どうすれば少しでも働きやすくなるか」を一緒に考えます。
解決できそうなことはすぐに行動に移すと、
「会社が自分を大切にしてくれている」と伝わります。
- 人間関係なら部署移動や役割変更を検討
- 働き方の改善なら柔軟な勤務制度の提案
- 成長機会が欲しい場合はプロジェクト参加や研修を検討
4. キャリアの展望を具体的に示す
社員が将来に不安を感じている場合は、
「この会社でどのように成長できるか」を示すことが大切です。
本人の得意分野や興味を踏まえ、
具体的なキャリアパスやチャレンジを提案しましょう。
- 昇進・昇格のステップ
- 新しいプロジェクトや役割への挑戦
- スキルアップのための研修や資格取得支援
将来の道筋が見えることで、
安心感や前向きな気持ちにつながります。
5. 報酬・福利厚生の見直しを検討する
給与や制度への不満は、離職につながりやすいポイントです。
市場や同業他社と比べ、
必要に応じて待遇や福利厚生を見直すことも考えましょう。
- 昇給や手当の改善
- フレックスタイムやリモートワークの導入
- 休暇制度の充実
公正で納得感のある待遇は、
社員の安心感やモチベーションの向上に直結します。
6. メンタル面のサポートを充実させる
心の健康に配慮することも、退職防止につながります。
相談窓口やカウンセラーの活用、ストレスチェックなど、
安心して話せる環境を整えましょう。
- 定期的な面談やフォローアップ
- 過重労働を避け、適切な休息を推奨
- 心理的負担を減らす職場環境の整備
7. 感謝の気持ちと居場所の大切さを伝える
日頃の努力や成果に対して、言葉でしっかり感謝を伝えましょう。
「あなたがいてくれて助かっている」
「会社にとって大切な存在だ」と伝えることで、
社員の自己肯定感や帰属意識が高まります。
- 直接伝える
- 面談や1on1で具体的に成果を褒める
- 社内で評価されていることをさりげなく共有
この章で伝えたいこと
- 強引に説得するよりも、寄り添いながら解決策を一緒に考える
- 具体的な行動や改善策が、社員の気持ちを動かす
- 感謝や安心感の伝達も、退職防止に大きな効果がある
会社を辞める人にやってはいけないNG対応

社員の退職意向に対して、やってはいけない対応があります。
知らずにやってしまうと、かえって信頼を失い、
退職の意思をさらに強めてしまうことも。
ここでは、優しい言葉で「気をつけたいポイント」を整理します。
1. 会社都合ばかりを押し付ける
「人手が足りないから残ってほしい」
「今は忙しいから辞めないでほしい」といった、
会社都合だけで話を進めるのはNGです。
社員は自分の人生やキャリアを考えて決断しています。
会社の事情ばかりを押し付けると、
やりがいを感じられず、さらに辞めやすくなってしまいます。
2. その場しのぎの約束をする
「給与を上げるから」「異動を検討する」といった、
すぐに実行できない約束は避けましょう。
約束が守られないと信頼を失い、
結局、退職につながることがあります。
3. 強引に説得する
「とにかく残ってほしい」と感情的に説得するのも逆効果です。
本人は長い時間をかけて決断しています。
無理に引き止めると不信感やストレスを与えてしまいます。
4. 他の社員と比較する
「○○さんは辞めずに頑張っているのに」
「あなたの方が優秀なのに」と比較するのもNGです。
社員一人ひとりには事情や価値観が違います。
比較されることでプレッシャーや不快感が増し、
退職の意思が強まることがあります。
5. 秘密裏に特別待遇を提示する
他の社員には内緒で特別待遇を提示するのも避けましょう。
一時的には引き止められても、
社内の公平性が損なわれたり、
本人に「その場しのぎ」と受け取られるリスクがあります。
6. 家族を巻き込むプレッシャー
「ご家族にも迷惑がかかるよ」といった発言で説得するのはNGです。
家庭の事情はデリケートで、
第三者を巻き込むと不信感やトラブルの原因になります。
7. 精神的な圧力をかける
「辞めたら後悔するよ」「次の職場で通用しないかも」と、
不安をあおるのも避けましょう。
恐怖や罪悪感を与えても、
信頼関係が壊れるだけで、退職防止にはつながりません。
この章で伝えたいこと
- NG対応は無意識でもやってしまいがち
- 強引・圧力・比較は逆効果
- 退職を防ぐには、理解と尊重が基本
もし引き止めが失敗したら?正しい送り出し方

どれだけ丁寧に対応しても、
退職の意思を変えられないこともあります。
そんなときは、関係をこじらせず、
円満に送り出すことが大切です。
1. 前向きに送り出す
「辞めること=失敗」ではありません。
これまで会社で積み重ねた経験は、
必ず次のステップでも活きるものです。
「これまでの頑張りに感謝している」
「新しい場所でも活躍できることを応援している」と伝えましょう。
- 退職後も良い関係を保つ
- 将来的に協力関係が続く可能性を残す
- 感謝の言葉で安心して送り出す
2. 無理に引き止めない
最終的な決断は本人に委ねましょう。
無理に残らせようとすると、しつこいと思われ、
悪い印象を与えるだけです。
- 理由や改善策が解決されていない場合は、再度検討してもらう余地を残す
- 強制ではなく、本人の意思を尊重する
3. 退職理由を振り返り改善につなげる
退職理由を丁寧に聞き、会社側で改善できる点を把握しましょう。
待遇・人間関係・働き方などの背景を理解し、
職場環境や制度の改善につなげることが大切です。
- 他の社員の離職防止に役立つ
- 職場改善を通じて会社の信頼感が高まる
- 次の退職リスクを減らす
この章で伝えたいこと
- 退職を止められなくても、前向きに送り出すことが大切
- 感謝と尊重の姿勢が、円満な関係維持につながる
- 退職理由を次に活かし、より良い職場作りに取り組む
退職を防ぐために管理職が日頃からできること
社員が日頃から安心して働ける職場をつくるためには、
人間関係をより良くするコミュニケーション力を高めていくことも大切です。
特に管理職は、相手の話を丁寧に聞き、
気持ちがすれ違わないように言葉を選びながら伝える力が求められます。
こうしたスキルは、普段の面談や1on1だけでなく、
ちょっとした日常の会話やフィードバックの瞬間にも活きてきます。
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